全国高P連福井大会報告
第64回 全国高等学校PTA連合会大会
福井大会 参加報告
日時 平成26年8月22日(金)~23日(土)
会場 サンドーム福井等
「教育と考福」 ~未来に引き継ぐ 知と恵み~
今年のPTA全国大会は、福井県で行われました。
遠 く古代の昔…白亜紀の前期に福井県には恐竜が生活していました。足掛け25年にわたる恐竜化石の発掘調査で、フクイラプトル、フクイサウルス、フクイテイ タンなど数種類の恐竜がいたことが明らかになっています。そして幕末には、先進的な開国論を展開し、将来を嘱望された若きリーダー橋本左内を輩出した土地 でもあります。
そんな長くまた幅広い歴史のある福井で、『教育と考福』をテーマに掲げ、子どもたちの「しあわせ」について考え、「家庭」「学校」「地域」「社会」が、それぞれの役割を見つめ直し共に学び連携して、PTA活動のさらなる進化と深化を目指す大会でありました。
<基調講演>
テーマ 今求められる孝福脳 ~脳科学者からの提案~
講演者 脳科学者 茂木健一郎氏
当初予定されていた教育評論家の尾木直樹氏(尾木ママ)が、病気療養で基調講演ができなくなり、ピンチヒッターとして脳科学者の茂木健一郎氏(茂木パパ)の講演となりました。茂木氏はテレビで観るままの人懐こい雰囲気をお持ちの方で、またお話も随所に笑いを散りばめながら、わかりやすくて、興味の持てる事例をたくさん紹介してくださった点も非常に楽しくあっという間の講演でした。
内容を、紹介します。
脳科学の分野からわかってきた「幸福」とは…人間の幸せな状態というのは、脳内からドーパミンが分泌された時である。つまり、幸せになる方法=ドーパミンを出す方法である。
では、どういう時にドーパミンが出るのか??
「自分ができないと思っていたことができるようになったとき」つまり達成感。そしてそれは、人と比べての達成ではなく、自分にとっての進歩・達成でドーパミンが分泌され、幸せな気持ちになる。
日本の子どもたちは、自己肯定感が他の国の子どもたちに比べ低い。確かに自分の個性を受け入れるのは簡単ではない。個性を考えたとき、自分の欠点ばかりが目についてしまうからであるが、実は自分の長所というのは欠点のすぐそばにあるのである。
失読症(文字の読み書きに関して著しく困難を抱える学習障害の一つ)の俳優は、台本を自分で読めない代わりに人に読んでもらったものを記憶する能力にずば抜けて長けているし、自分で何かをするのは苦手でも周りの人間の能力を見抜く力を持つ青年は、適材適所でスタッフを配置し、全米一の経営者になった。
人にはいろんな生きる道がある。欠点も個性であるし、それが故の長所もあるのである。
また、逆に幸せになる上でしてはいけない思考が「フォーカシングイリュージョン」である。何かに焦点を当てて思い込んでしまうこと…例えば、志望校に受からなかった事実があるとして、それそのものはけして不幸ではないのにそれによって自分は不幸であると思い込むことによってその瞬間に不幸せになってしまうものである。
さて、まとめます。
人間の脳は、「オープンエンド」と言って、一生学び続けることができるそうです。
自分で出来ないと思っていた物事に挑戦し、欠点をも含んだ個性を受け入れ、思い込みを排除し、批判的思考や減点法ではなく、今の自分の姿を見る。
幸せは、どこかにあるものでも、誰かが与えてくれるものでもなく「自分の脳の中にある」ということなのですね。メーテリンクの童話「青い鳥」の中で、チルチルとミチルが探し続けていた青い鳥が実は自分たちが飼っていた鳥だったように。
一生学び続けることができるこの素晴らしい脳を、自分の力でコントロールし、幸せになることができる。これが、過去の研究から分かってきた現代の脳科学における幸せ脳の作り方というお話でした。
<研究発表>進路選択と親子のコミュニケーション
第一部は、(株)リクルートマーケティングパートナーズの「カレッジマネジメント」編集長の小林浩氏の講演「第6回高校生と保護者の進路に関する意識調査2013から~社会環境の変化と進路選択~」をお聞きしました。
その後第二部として小林氏をコーディネーターとし、パネリストに二人の現役高校生、経営者の立場と父の代表として(株)セイワ工業専務取締役の東憲彦氏、PTAの立場と母の代表として全国高等学校PTA連合会理事の井上秀子氏、学校の先生という立場から指導に当たる代表として福井県立美方高等学校の橋本有司氏の五人が参加する座談会に参加しました。
どちらでも話題の中心となったのは、少子高齢化や人口減、経済のグローバル化などの社会の急速な変化の中、将来への不安が大きいということ。
そしてそれは、子どもよりも親が感じていることが、アンケート調査で分かっているのだが親の感じている不安は子どもにも伝わってしまうということ。多様化する社会の中で情報が不足し、進路のアドバイスが大変難しいと感じている親が多いこと。それでも、子どもたちは親とのコミュニケーションを望んでいるし、実際86%の子が親にアドバイスをもらいたいと思っているそうです。子どもは親に対して、望みを高く持ちすぎないでほしい、勉強や成績の話ばかりしないで欲しい、最新の情報を知りたいから一緒に調べてほしいという気持ちを持っているようです。
子どもの要望も一律ではありません。過干渉にはならず、子どもの考えを尊重し、子どもの個性を見て、保護者自身が行動することが、親子両方の将来への不安を軽減する方法ではないか、と感じました。
<最後に>
瀬戸西高校の代表として、校長先生、田財会長、谷口副会長、若杉委員長、林委員長、水野委員と一緒に全国大会に参加させていただき、貴重な体験をたくさんすることができ、大変感謝しております。ありがとうございました。
大会を通じ、家庭と学校、そして地域が深く結びついて子どもを育んでいくことが、今まで以上に大事な時代であると痛感しました。
親がレールを引きそこに子どもを乗せるのではなく、子どもが自らの力で行き先を決め、そこに向かってレールが引けるように、環境を整え、バックアップし、子どもたちが将来に希望を持てるよう見守ることが何より大切なんだと改めて思いました。
同時に、私たち親も、自分の幸福は自分で作れることも忘れず、「人生は生きるに値する」と感じ生き生きと暮らしていきたいと心から思いました。
報告者:副会長 田中桂子